〈レビュー・感想〉『明日に向って撃て!』ブッチとサンダンスの最高の生き様!

ネタバレあり。
内容を含みますので、ご注意ください。
物語のテーマについて書いています。

 

原題は『Butch Cassidy and the Sundance Kid』。1969年。二人のアウトローのアクション・コメディ・ロードムービーです。実在した二人の銀行強盗をモデルにして、脚本はウィリアム・ゴールドマン、監督がジョージ・ロイ・ヒル。音楽はバート・バカラックで、挿入歌の「雨にぬれても」は、この映画を観ていなくても聴いたことがあるメロディー、今も輝くスタンダード・ナンバーです。


 
「ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドはかつて西部を支配した。」という前書きから始まります。壁の穴強盗団を率いるブッチ(ポール・ニューマン)とその相棒、銃の名手のサンダンス(ロバート・レッドフォード)は、列車強盗を繰り返しているところ、謎の集団に執拗に追われはじめます。そして、逃げるようにサンダンスの恋人エッタ(キャサリン・ロス)と共にニューヨークを経由して南米ボリビアへ。金、銀、錫を求めて向かったボリビアでしたが…。

 

史上最高のコンビ!

コンビといえば、シャーロック・ホームズにワトソン君、ナポレオン・ソロにイリア・クリアキン、日本だとタカとユージ、右京さんに亀ちゃんでしょうか。そしてそして、この映画のブッチとサンダンス。

 

この二人の組み合わせがもう最高なんです。カリスマ性のある参謀役のブッチに、あまり何も考えない早撃ちのサンダンス・キッド。ニューマン×レッドフォードの甘いマスク×甘いマスクの二人が、カッコいいんだけど、どこか抜けてていいんですよね。

 

私は、映画を観る前にラストだけ知っていたので、実は中盤は拍子抜けしました。ボリビア軍に囲まれるなんて、どんなに悪いことをしたんだろうと思っていたら、二人は逃げるだけ。追いかけてくる謎のプロ集団から、逃げて逃げてひたすら逃げまくる。カッコ悪い。西部劇のヒーローのはずなのにかっこ悪い。

 

「逃げるが勝ちだ」。
正面から闘わない。なのになんで、この二人はこんなにも愛される存在なのでしょうか。

 

二人が愛されるわけ

参謀役ブッチは、確かに、大事なところで妙案を出します。壁の穴に帰ってきたところ、リーダーの座を狙うという手下のハーヴェイとナイフで対決する場面では、「ルールを決めよう」と言いながら、相手の股間を蹴り上げるズルさと賢さ。それなのに、全然憎めない。むしろ、対決に勝ってかっこいいと思うシーンです。

 

列車強盗でもみんなを統率し、カリスマ性がはちきれんばかりに輝いているけれど、それがサンダンスと二人になるとけっこうアホだったりするんです。ボリビアに着いたとき、しゃべれると言っていたスペイン語は全くわからないし、これまでさんざん悪事ばかり働いてきたのに、いざヤバくなったときに「人を撃ったことがない」と言い出す始末。

 

あと、逃げ込んだいつもの娼婦館では、“色男”に、割とあっさり居場所をバラされます。それまでお金も使い、人柄も慕われていたんじゃなかったんでしょうか!そのあとプロ集団の馬たちをやけになって逃がそうとして大声を出す姿は、考えなしのサンダンスにも「お前の方がバカだ」と言われます。

 

逃げるところでは、砂丘のような場所で馬に乗った二人が一度消えて、また現れるシーンが美しすぎます。そのあと、川に飛び込む羽目になるとは。ここでのサンダンスのごねる様にも吹き出してしまいます。一番初めに、暗い酒場でポーカーをしている時の表情とは別人です。

 

なんとか就けた仕事、給料守りの爺さんに二人ともが「バカたれ」だと言われるところは声を出して笑ってしまいます。それと、サンダンスが6月にやった銀行の横で気まずすぎると歯を出すところが、なぜか好きです。

 

そんな、二人の素が出ているところが愛される秘密なのかなと思いました。毎日を彩ってくれる相棒の存在。信頼できる相棒を横に、気を抜いてもいい。気取らず、自分自身のままいられる心地いい関係。

 

そして、悪いことばかりしているんだけど、純粋に、その眺めを楽しむような二人の無邪気なところが、愛されるわけなのかと。

 

エッタと『雨にぬれても』

脚本のゴールドマンは、エッタの描き方が最も難しかったと言っています。サンダンスにもブッチにも愛され、スペイン語を教えて強盗に加担し、「あなたたちの死ぬところは見たくないわ」と言い、死にゆく二人の元を去るその存在は重要です。

 

『雨にぬれても』は知らない人はいないくらい、有名な曲。私は、この映画でかかるとは知りませんでした。タイトルも知らなかったし覚える必要がないくらい、口ずさめる愛すべきメロディー。とても明るいんだけど強がりでどこか物寂しげで、ブッチの表情にぴったりです。

 

セピア色のストップモーション

レッドフォード見たさに観たんですが、はじめからポール・ニューマンに釘付けでした。
かっこいいし、なんだかとっても明るくて魅力的です。

 

レッドフォードは少し影のある役柄というところもありましたが。その後、この映画をきっかけにブレイクしたロバート・レッドフォードは、この役の名前にちなんで「サンダンス映画祭」を立ち上げます。

 

ラストのセピア色のストップモーションが最高にカッコいい!

 

ブッチの走り出す脚が斜めになっているところが勢いがあっていいですね。私は、静止画はその後は想像におまかせというよりは、静止画そのもの、一瞬だけを切り取った、二人の生き様をあらわしていると感じています。