【書評】柳川範之『東大教授が教える独学勉強法』学ぶ目的と学び方

草思社、2014年。2014年7月発行の本ながら、あとがきにはアフターコロナ時代の到来を予期したかのように、ネットを通じた講義など「これからは、学びを巡る環境も大きく変化する時代だと思っています」と書かれています。はじめにには、日本の学校ではあまり学び方を教えてはくれないとした上で、「本当は、中身だけでなく、勉強というのはどうやってするものなのか、という学び方をもっとマスターする必要があります。」

 

自分なりの答えを出す

中学卒業後、海外にいたため高校に行かずに独学、という経歴は数少ないと思います。東京大学経済学部教授という著者は大学入試も受けたことがなく、自分の偏差値もわからなかったとのこと。そして、学び方は人によってずいぶん異なるため、自分のタイプや個性に応じて、自分のペースで学んでいくことがとても大切で、そうやって主体的に学び考えていけることが独学の醍醐味だと言われています。

 

モバイル機器の発達によってインターネットがいつでも使えることが影響して、これまでの「知識や情報を覚える」勉強の比重はどんどん下がっていて、情報が氾濫する中、勉強において本質的に大事だった深く考えて「選ぶ」「決める」ということが求められる時代になったとあります。本当に重要なのは、正解のない問題にぶつかったときに、自分なりに答えを出そうと考えていくことだと。

 

そして、学ぶことにおける一番大事なプロセスは、多少の時間がかかるけど自分の中でしっかりその情報を吟味して、その意味を考え、自分のものにする「熟成させる」作業。その段階では、何を自分は考えてそれをどう使っていきたいのか、という学んだ先をイメージすることが重要だということです。

 

試行錯誤でいい

試行錯誤でいい。というより、試行錯誤しかない。気楽に始めよう、という重要なメッセージがたくさんあります。自分に合うやり方で理解するために、いろんな本を読んでみる。「わからない」で立ち止まらないこと。ダメだと思わないこと。情報を素直に受け取ってしまわないこと。

 

勉強や学びのプロセスとは、実は、いったん押し返してみること。本当に正しいのかという反論も含めて頭の中で考えていくことこそが学び。目標は3割ぐらいできればいい。目標達成よりも大事なことは、きちんと理解度を高めていくこと。

 

自分の進捗にがっかりしないこと。正解も失敗もないから、自分に合った勉強の仕方や自分のペースを発見すること。あせらず、少しずつ進んでみて、引き返してみて。

 

頭にいったん入れたことを「揺らす」

本書の中で一番おもしろいのが、第5章の「揺らす」思考実験。本を読みながら自問自答、著者とけんか(反論)する→普遍化する(共通項、本質、周辺・関連)=応用する(基本+少し変化させる「揺らす」思考実験)。ここはぜひ読んでから、著者の学びの本質を汲み取ってください。

 

そして、アウトプットに関して。違うこと、新しいこと、おもしろいアイデアをアウトプット(文章)して本当にそうなのかを押し戻す、人に伝えようとして書くこと、自分の言葉でやさしく書くことでオリジナリティ、独創性が生まれるということでした。

 

独学……小学生の頃、宿題を「独学ノート」と呼ぶ先生がいらっしゃって、元教師だった祖父にその表紙を見られた時にフッと笑われてしまい、その時には笑われた理由がわからなかったのですが、独学っていう言葉は奥が深いのだなと今になって思います。本来、学びって楽しいもの。探究心が満たされるもの、そしてまた生まれるもの。一人で勉強する、たくさんの試行錯誤の前にこの本を読んでみると、少し頭を整えてくれるかもしれません。学ぶ目的をはっきりさせて、「学び方」は試行錯誤で始めてみましょう。