〈レビュー・感想〉『スパイ・ゲーム』に見る男の美学

ネタバレあり。
内容を含みますので、ご注意ください。
物語のテーマについて書いています。

 

原題は、『Spy Game』。2001年、アメリカのスパイ・サスペンス映画。監督はトニー・スコット(『トップガン』(1986年)、『デジャヴ』(2006年)など)。リドリー・スコット監督は兄。主演は、ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピットの新旧二大共演。引退を目前にしたCIAのベテランエージェントが、自分が育て上げた愛弟子である若きエージェントを命の危機から救い出す、頭脳、心理と彼の経験を駆使したスパイ・ミッション。

 

1991年、CIAエージェント、ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)が円満退職を迎えようようとしていたその日、愛弟子であるエージェント、トム・ビショップ(ブラッド・ピット)が中国で捕われたという知らせが入る。ミュアーは、ビショップについての情報を提供するよう、同期だったトロイ副長官(ラリー・ブリッグマン)から会議室に呼び出される。

 

ネイサン・ミュアーの壮大なミッション

ロバート・レッドフォードとブラッド・ピットの新旧二大主演という話題性もさておき、そのストーリーと過去を振り返る構成に見応えがあります。舞台は会議室ながら、タイムリミットがある中で緻密に練り上げられる、ベテラン工作員ネイサン・ミュアーだけの壮大なミッションが見もの。

 

12年もののウイスキーを飲み、情報提供者(協力者)には入れ込まず、貯金をしてそれには絶対手をつけるな、というスパイの掟三ヶ条。


 
「ノアはいつ方舟(はこぶね)を作った?」
「雨が降り出す前だ。」

 

常に相手の先を読んで、大胆不敵、時には愛嬌を見せるネイサン・ミュアーの戦いぶりに男の美学を見ます。スパイの掟三ヶ条は、最後まで守られるのでしょうか。

 

男の美学って何?

男の美学って何でしょうか。女である私にはわかりません。仕事ぶりのこと?仕事のやり方のこと?仕事にかかわらず、その人のやり方のような気がします。どんな方法を選ぶかという。「手段とはすでに目的である」っていう言葉があって、谷川俊太郎さんの本に載っていたような記憶があるんですが、調べたけどわかりませんでした。でも、多分、どんな道を行くか、選ぶかっていう意味だと思うんです。

 

ネイサン・ミュアーはCIAのエージェントとして、時に冷徹な判断を下してきました。そんな彼の行動は「目的のためなら手段を選ばない」という言葉の方が合っているかもしれません。実際に彼は、仕事上の目的のために、人を傷つけてきました。でも、その男が一人の男のために、友人のために、熱いねつを心に秘めて行動します。全てを捧げて、と言ってもいいかもしれません。その心意気とやり方、その道を選ぶ彼の在り方に胸を打たれました。

 

相対する二人

対して、ブラッド・ピットが演じるのは正義を持ち、人間味あふれるビショップ。彼の、はじめの若い表情から一人前のスパイに成長を遂げる様は、ミュアーでも驚くほどでしょう。しかし、ミュアーの作戦を冷徹に遂行する姿は、絆が結ばれたかと思われたビショップとの間に軋轢も生みます。

 

二人が、考え方の相違から別れるシーンは、力があって圧倒されます。二大スターの年齢差やキャリアの差から、実際の立場が折り重なって見える点も映画に厚みを出しています。

 

脇役もいいですね。呆れながらもミュアーを支えるグラディス(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)。ミュアーに「歯に何かついてるぞ」と言われる、少し神経質なハーカー(スティーブン・ディレイン)は会議室でのライバル。

 

2001年のブラッド・ピットが若くてかっこいいですね。2001年といえば、ブラッド・ピット出演の『オーシャンズ11』と『ザ・メキシカン』もこの年の作品です。

 

ネイサン・ミュアーは実在の人物?

めったにないことですが、1週間にわたって3、4回観てしまいました。本当にじわじわとワクワク、ドキドキします。ストーリーも緊迫感があって見応えがあるんですが、レッドフォードのちょっとした仕草や表情がもうかっこよくて。かっこいいと言っても、モデルのような様を言っているのではなくて、その多彩な表情によって、ネイサン・ミュアーが実在した人物のように見えるんです。

 

最後の、ビショップことブラッド・ピットの、作戦名を聞いたときの表情は、この映画の全てを物語る、心熱くなるシーンです。