〈レビュー・感想〉『マスク・オブ・ゾロ』ホプキンスVSバンデラス

ネタバレあり。
内容を含みますので、ご注意ください。
物語のテーマについて書いています。

 

オープニングの、逆光の中での剣さばきがかっこいい『マスク・オブ・ゾロ』(原題『The Mask of Zorro』)は、1998年のアメリカのヒーロー・アクション大作です。

 

監督は『007 ゴールデンアイ』(1995年)、『007 カジノロワイヤル』(2006年)などのマーティン・キャンベル。製作総指揮にスティーブン・スピルバーグも名を連ねます。情熱的でスペインを思わせる曲が耳から離れない音楽は、『タイタニック』(1997年)でアカデミー作曲賞を受賞したジェームズ・ホーナー。

 

民衆のヒーローである初代ゾロのドン・ディエゴ・デ・ラ・ベガ(アンソニー・ホプキンス)が、泥棒稼業のアレハンドロ・ムリエッタ(アントニオ・バンデラス)を二代目ゾロに育て上げる。そして自らは、宿敵ドン・ラファエル総督(スチュアート・ウィルソン)が一人娘エレナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)を誘拐して育てるという、過去の理不尽な仕打ちに仇討ちする。

 

怪傑ゾロ

仮面の剣士ゾロといえば、みんなの英雄。
子供の頃「かいけつゾロリ」のファンで、よく読んでいたので、ゾロリの方の存在は知っていました。

 

本家ゾロはアメリカの作家ジョンストン・マッカレーが創作したヒーロー。
ワイドショーで見たんですが、アメリカ人が新型コロナ渦中でもマスクを着けない理由に、「怪傑ゾロがアイマスクは着けるけど、口は出しているから」というものがあるのは本当でしょうか。

 

アンソニー・ホプキンスVSアントニオ・バンデラス

本作の見所は、敵対するラファエルに「愛する者から引き離された」デ・ラ・ベガが20年後、アレハンドロと出会い、育て上げて敵陣に向かう前半〜中盤部分ではないでしょうか。物語の始まりは、子供がゾロを見たさにテントから目を出すシーン。のちのゾロであるアレハンドロと兄ホアキンのムリエッタ兄弟です。

 

この映画は、登場人物が生き生きとしていて魅力的です。

 

二代目ゾロに全てを教えようとするデ・ラ・ベガに「チャーム(気品)が必要」と言われてしまうアレハンドロ役のアントニオ・バンデラスが3枚目、やんちゃなところがチャーミング。完全無欠のヒーローのはずなのに、馬にも言うことを聞いてもらえず、コメディがお似合いのゾロです。

 

でも、兄殺しのラブ大尉への復讐心をひた隠して、厳しい訓練を受け、紳士的に振る舞い、民衆の役に立とうとする姿は、初めて鏡を見せられた日からすると見事な成長ぶりで、ゾロの精神を引き継いでいます。

 

そして、そのデ・ラ・ベガことアンソニー・ホプキンスの、動きの一つ一つ、立ち居振る舞いが美しいんです。正に気品というものでしょうか。デ・ラ・ベガが「チャーム(気品)」と腕を優雅に動かす動作が、いかにもアレハンドロには得難いことを表しています。はじめ牢獄に入れられていたベガですが、どんどん紳士である自分を取り戻していく姿は渋く、年齢を重ねた重みのあるかっこよさです!

 

エレナ役キャサリン・ゼタ=ジョーンズ

そして、ヒロインのエレナ役キャサリン・ゼタ=ジョーンズが眩いばかりの美しさを放ちます。つややかな長い黒髪に透き通るような肌、意思の強い瞳に凛とした表情、勇敢な心持ち。その土地にしか咲かないというロムネヤ(カリフォルニア南部およびメキシコ北部が原産)が香り立つような美しさで、ハタチの瑞々しい女性を演じています。

 

そして、キャサリンが得意だというダンスシーンが情熱的で、もう素敵です。
アレハンドロと剣を交えるシーンでは太い声も出し、ただ微笑んでいるだけのヒロインではありません!

 

ゾロを阻む二人の悪役

それから、ヒーローにはヒールがつきもの、二人の悪役が冷酷非道なんです。ラファエルは、ゾロへの嫉妬心とその妻エスペランザへの執着心から、二人の間に生まれた赤ん坊を誘拐、自分の手で育てる偏愛者。ゾロを捕らえる為なら、名も知らぬ100人を突き出してもいいと噴きます。

 

ラファエルの副官ラブ大尉は、人殺しを自己の快楽としている、軍人でなければただの変質者です。アレハンドロは、兄を殺したラブ大尉に復讐を誓いますが、デ・ラ・ベガに第一に、怒りは禁物だと諭されます。異常な人格を持つラブ大尉は、アレハンドロを目の敵にしており、ムリエッタ兄弟の頭、3本指のジャックは二度撃たれることになります。

 

後半はうまくいきすぎる点が、映画だなあと我に返ってしまいました。物語はじめの、初代ゾロが愛馬トルネードに跨がり100人を相手に戦う、というところは壮大で見入ってしまうんですが、後半は一対一でもゾロの方が強いし、爆破が大きいので。

 

ゾロは繰り返す

バンデラスの魅力が炸裂!なのは物語が終わって一年後でしょうか。デ・ラ・ベガがやっていた、赤ん坊に子守唄がわりの語りをするところ。大きい動きがいかにもやんちゃで魅力的です。
このシーンはずっと見ていられる、でもこれで終わりかーと残念な気持ちになります。

 

続編に同マーティン・キャンベル監督、バンデラスとキャサリンの主演も変わらず、息子ホアキン(兄の名をとった)との物語『レジェンド・オブ・ゾロ』(2005年)があります。